伊東良徳の年間300冊読書日記

専門書からHな小説まで手当たり次第に雑読します

非暴力主義の誕生 武器を捨てた宗教改革

 「悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい」「敵を愛し、迫害する者のために祈れ」というイエスの教えに忠実に非暴力を貫こうとしたキリスト教の少数派であるメノナイト、アーミッシュ等の誕生とその後を紹介した本。

 非暴力主義といえば、ガンディーやキング牧師らの非暴力不服従運動が思い起こされ、それを想起して手に取りましたが、非暴力不服従運動は一定の政策・権利の実現を目的とする運動でありまた抵抗の一形態である(非暴力であることは広範な世論の共鳴を得るための手段・方法論である)のに対し、メノナイトやアーミッシュは攻撃・加害に対し抵抗しない(ノンレジスタンス)、防御さえしない(ディフェンスレス)(ただし加害を避けるために潜伏・逃亡することはある)し、何かの目的のためにではなく非暴力で加害者をも愛し赦すことが信仰生活そのものであるとされます。

 生き方として見たときに崇高さ・畏敬を感じますが、そのようなコミュニティにおいても暴力を振るう者はおり、性的虐待家庭内暴力の被害者に赦しの実践が求められるという暗部も抱えることになります(97~98ページ、145ページ)。

 戦時体制や徴兵制下での兵役拒否や非暴力を説くこと自体に対する圧力(権力者によるもののみならず、戦わないことが愛国者でない・非国民とか、不公平だなどの妬みをいう民衆からも加えられる:現代日本でいえば生活保護受給者バッシングなどに見られる心情に近いと思います)などで理念を貫けずにさまざまな妥協がなされてきたこと、団体側からいえば生き残りのための戦術・現実を踏まえた対処の記述に、いろいろと考えさせられます。

 

踊共二 岩波新書 2025年1月17日発行