性同一性障害をカミングアウトできず俯いて暮らしてきた子ども時代を持つ凪沙/武田健二と、幼い頃は優しかった母から虐待を受けるようになり心を閉ざしてきた一果が、不器用に心を通わせていくという様子が心を打つ作品です。
貧しい者には手が出ないバレエという世界に、貧しい凪沙や一果がチャレンジして行く設定には、快感と哀感が半ばします。他方で裕福な親の元で育ちながら自分の限界を感じているりんのそれでありながら一果にまっすぐな気持ちを向ける姿に、庶民の弁護士としては富裕層にはあまり共感しないのですが、それでも切ない思いを持ちました。
内田英治 文春文庫 2020年7月10日発行